腸重積症

 口側の腸の一部が肛門側に隣接する腸に捲れ込み、腸閉塞(腸の内容物を止めてしまう)の状態を起こし、放っておくと血流障害のため取り込まれた腸が壊死状態に陥ってしまう病気です。生後4ヶ月から2歳頃までの乳幼児に多く、小腸の末端が大腸に入り込むタイプが最も多く見られます。特に原因となる腫瘍や奇形などの原因となる病気がない、原因不明の場合が多いのが特徴です。しかし、半数近くに感冒症状や下痢などの発症に先立つ感染症状が見られることより、アデノウイルスなどのウイルス感染が関係しているのではないかと考えられています。米国ではロタウイルスワクチン接種で本症の発生率が増加したことよりロタウイルスの関与も疑われています。
 主な症状は腹痛および嘔吐、血便です。痛いと言えない乳児は、突然顔色が蒼白となり、グッタリし、火がついたように激しく泣き始めます。数分で治まったかに見えますが、10分から30分経つと再び激しく泣き始めます。この様に腹痛のため繰り返し激しく泣く事を間歇的腹痛と言い、この病気の特徴です。嘔吐は病気が進行すると吐物に黄緑色の胆汁が混じるようになります。血便は典型的には鮮血と粘液が混じり、苺ゼリーの様になります。しかし、血便が見られなかったり、鮮血そのもののこともあります。腸重積症が疑われた場合には浣腸で血便が出るかどうかが、診断の重要なポイントとなります。
 診察の時、腹部にソーセージ様の腫瘤を触れることが出来、触れると痛がるのが特徴です。しかし、患児が腹痛で腹部を固くするため、腫瘤を触れることが出来ないこともあります。超音波検査では、はまり込んだ腸管を的(まと)状に認めることが出来ます。
 治療としては早期であれば高圧浣腸で整復を試みます。およそ90%の患児は整復できますが、整復できない場合には外科的手術により整復します。