ヒルシュスプルング病

 ヒルシュスプルング病は以前、巨大結腸症と言われていた病気です。腸管は腸の壁の中にある神経細胞の働きにより、腸の協調の取れた動き(蠕動運動)が起こり腸の内容物を肛門側へ送っていきます。ヒルシュスプルング病は直腸から結腸(大腸)のある部分(多くは直腸からS状結腸)の腸管壁内の神経細胞が生まれつき欠けているために蠕動運動が起こらず、その部分の内容物を肛門側へ輸送できなくなる病気です。
 症状は新生児期では胎便が出にくくなって腹部が膨れてきたり(腹部膨満)、嘔吐したりする腸閉塞の症状が出てきます。しかし、神経細胞が欠けている部位や範囲により多少異なります。神経細胞の欠けている部位が腸管の上部になるほど嘔吐が現れやすく、下部ほど嘔吐の発現が遅く、腹部膨満が著明になります。胎便の排出が生後24時間以上みられない場合この病気の可能性があります。乳幼児以後では慢性の便秘腹部膨満で気付かれます。
 診断を確定するには注腸造影や直腸肛門内圧検査(*)、直腸粘膜生検による組織化学的検査、直腸筋層生検が必要です。
 治療は確定診断がつけば手術が必要です。新生児の場合は保存的に浣腸を繰り返したり、一時的に人工肛門を作って体重の増加を待ってから根治手術を行います。新生児でも確定診断がつけば直ちに根治手術が行われる例もあります。
手術は神経のない腸管を切除し、健康な腸管を繋ぎ合わせます。

* 正常な直腸に便が入ると内肛門括約筋が弛緩します(肛門内圧が下がります)が、直腸の壁の中の神経細胞が欠けていると、この反射が無くなり、肛門内圧が下がらなくなります。