嘔吐

 食物は通常、口から入って肛門から出るように一方通行で進みます。しかしお腹の筋肉が激しく収縮して胃の内容物が逆流し,口から出てくることがあり、こ れを嘔吐と呼びます。この反応を制御しているのは脳にある嘔吐中枢です。嘔吐中枢の周りには唾液を出す中枢や血管の運動に関係する中枢があるため、嘔吐の 際によだれが多くなったり、冷や汗をかいたり、顔色が悪くなったりする事があります。嘔吐は脳や脊髄などの中枢神経系の病気や胃腸の病気、激しい咳などい ろいろな原因で起こってきますので、ただ嘔吐を抑えれば良いのではなく,その原因を調べ根本的な治療を行うことが必要不可欠です。
  嘔吐を激しく繰り返す場合や、激しい腹痛、繰り返すお腹の張りを伴う場合、吐いたものに血や胆汁(黄色や緑色をしています)が混じっている場合、熱と頭痛 を伴う場合、ウトウトしてグッタリしている場合は重症の可能性がありますので、至急小児科を受診しましょう。腸重積症や腸閉塞症、胃腸からの出血など消化 器の病気で緊急の処置が必要となる場合や、髄膜炎や脳炎・脳症、頭蓋内出血など頭の重篤な病気である可能性があります。
  ただ、お子さんの嘔吐の原因の大部分はウイルス性胃腸炎で、ご家庭での水分補給がうまく行けば、多くは外来での治療が可能です。その他に細菌性胃腸炎やアセトン血性嘔吐症(いわゆる自家中毒症)なども原因として多いものですが、こちらも水分補給が大切です。
  嘔吐の対処法のポイントは繰り返し吐かせない事です。吐き気が強い時には、しばらく(数時間)何も食べたり飲んだりさせずに吐き気が治まるまで待ちましょ う。吐き気が治まった様であれば,まず水分を少しづつ(先ずはスプーン1杯の水分を与え,30分程様子をみて大丈夫であれば1口程度の水分をといった具 合)飲ませてあげて、様子を見ながら徐々に増やしていきましょう。水分としては湯さましや番茶、乳幼児用のイオン水が良いでしょう。果汁であれば少し薄め たリンゴジュースが良いでしょう。ミカンやオレンジなどの柑橘系のジュースは吐き易いので避けましょう。また、牛乳やヨーグルトなどの乳製品や冷たいもの も避けましょう。水分を摂っても吐かなければゆっくりと消化の良いものを食べさせてあげてください。
  何も飲ませなくても吐き続ける場合やおしっこの量が減り、グッタリしてきた場合は点滴が必要となりますので急いで受診しましょう。